中小企業診断士って稼げるの?年収の理想と現実
中小企業診断士の資格って実際の所、どれぐらい稼げるんでしょうか。せっかく頑張って取ってもあんまり稼げないのでは取る甲斐がない気がして…
中小企業診断士受験ブログなので、「間違いなく儲かります!」と断言したいところですが、正直な実感をお伝えします。年収1千万円は十分可能だけど、なかなか到達している人がいないというイメージです。
年収1千万円はすごいですね…。なかなか到達している人がいないのはなぜでしょうか。私は到達できそうでしょうか。
では、今回はそのあたりの中小企業診断士の年収についてご説明しましょう。
この記事では、中小企業診断士の年収ってどのぐらいなの?資格とる価値はあるの?という疑問を抱いている人の疑問を解消します。
私は、公認会計士・税理士を本業とする兼業の中小企業診断士で、中小企業診断士としては補助金申請支援が収入の柱となっています。中小企業診断士が実施する業務のみで年間1千万円程度の売上が見込める事業となっています。

中小企業診断士の平均年収は知っても意味がない!
中小企業診断士の平均年収は700万円とも、1,000万円ともいわれていますが、全中小企業診断士の、中小企業診断士の資格の力で得られた平均年収はもっと低いと考えられます。年金暮らしで趣味で資格を取った人など0円の人も多数いるためです。
中小企業診断士の平均年収はどれぐらいか?ということに興味を持たれた方は、きっとこのように考えているのではないでしょうか。
「中小企業診断士の平均年収がわかれば、平均的な自分もそれぐらいは稼げるだろう」
「中小企業診断士の平均年収がわかれば、平均よりイケている自分はその1.2倍はいけるのではなかろうか」
「中小企業診断士の平均年収がわかれば、いくらダメな自分でも半分はいけるんじゃないか」
他の資格であればこの考え方はそれほど外れていないかもしれません。しかし、中小企業診断士にはこの考え方は適用できません。
中小企業診断士は仕事の内容で収入が全く異なる
中小企業診断士全体の平均年収というくくりでは、目安にはなりません。というのも、M&Aを専門にしている中小企業診断士と、ITコンサルを専門にしている中小企業診断士では、年収のバラツキも平均も全然変わってきてしまうからです。中小企業診断士といっても、様々なコンサルタントとして活躍している人がいます。
例えとして出したM&Aを専門にしている中小企業診断士は1発あてれば数千万円になる可能性がある一方で、いい案件に巡り合うことが非常に難しく、1年ごとで見ても診断士ごとで見ても大きくばらつきがあります。
一方で、ITコンサルの方は、案件自体の規模は小さくなるものの常に需要はあり、M&A専門の中小企業診断士に比べてはるかにばらつきは少ないと考えられます。
このように、中小企業診断士の専門分野ごとに平均年収を割り出すことができれば大体の目安とすることは可能でしょうが、そもそもどの中小企業診断士がどの分野を専門としているのかなど下手すると本人ですらわからないため、客観的なデータは存在しません。
したがって、平均年収ってどれぐらい?という疑問が解消したとしても何の意味もないということになります。
そんなことよりあなたの計画は?
そうなってくると、「どのぐらい稼げるの?」という疑問にはどうすればこたえられるでしょうか。
それは、各コンサルタント業務の単価と想定件数によってわかります。
あなたは、どういった業務を提供しようと考えているでしょうか。私の場合、最近中小企業診断士として依頼が来る補助金の支援業務であれば、1件着手金16.5万円(税込)、成果報酬5.5%(税込)として引き受けています。
着手金は親しい経営者であったり、その紹介である場合には免除しているので、計算に入れないとして成果報酬5.5%は会社が事業計画で想定する投資額に比例します。労力はそこまで変わらないので、できるだけ大規模投資の案件にかかわりたいのが本音ですが、社長さんが本当にやりたいと考えているのであれば、金額が小さいので断るということはないです。
こういうルールで報酬を獲得する場合、年収1,000万円を狙うのであれば、2億円弱の補助金獲得に貢献する必要があります。
また、私の処理能力が1回の申請で3件が限度とした場合、年間5回の申請機会があるとすると、最大15件の案件を処理できます。最大件数は無理として年間10件とすると、1件2千万円の補助金獲得規模が必要になります。その中で失敗するケースを考えると1件平均は3千万円程度になります。
自分の中小企業診断士としての年収がいくらかというのは、果たしてそれが現実的か?というところにかかっています。
知らなければいけないのは平均年収ではなく、あなたがやろうとしている業務の処理件数と単価です。
あなたの年収はどのぐらい?年収をアップしたいなら
先ほどの私の例でいけば、1件の獲得補助金が3千万円はちょっと金額的に大きすぎるということであれば4つのアプローチがあります。
①目標を下げる
もっとも簡単なのは、年収1,000万円をあきらめるという方法です。
年収500万円でも十分生活していくことはできます。目標値を半減することで現実的な数字に近づけることができます。
②処理件数を増やす
次に、何らかの効率化する方法を見つけ出し処理件数を増やすという方法があります。この方法が最もみんなが幸せになれます。困っている社長さんをより助けることができますし、私の収入も増えます。
しかし、何らかの効率化する方法を見つけ出すというのが難しいです。それがすぐにできればやっています。
③単価アップ
また、1件当たりの単価を上げることも有効な方法です。この方法は私はいいですが、社長さんにとってはマイナスです。ただ、目標達成に関していえば最も現実的です。
流れ的に、依頼の件数が増えてきてとても捌けないとなったら、成功報酬8.8%だったら受けてもいいとか、着手金20万円なら追加でなんとかもう1件がんばろうといった形になってきます。
④新分野展開
最後に、まったく別分野の業務を追加することで収入アップを狙う方法です。こちらは労力をかけずにできるものでなければいけません。労力がかかるなら処理件数アップと同じ問題が発生するからです。
現行の業務と作業のタイミングがかぶらず、並行してできるものであればそれでも問題ありません。
高い年収が期待できる診断士の仕事って?
では、あくまで一例としてですが、様々なタイプの中小企業診断士の年収について推定してみたいと思います。補助金申請支援を中心としたパターンは前述のもので示していますので、別のパターンについて検討してみます。
再生支援中心の中小企業診断士
中小企業診断士の先生方を見ていて、安定して収益を上げている人の筆頭は再生支援を行っている診断士です。最近は補助金申請支援の方が充実していますが、リーマンショック直後や、さらに前のITバブル崩壊直後など、中小企業が経営危機に陥る波は定期的に訪れています。
そして今後、コロナ融資の返済が本格的に始まり次の再生支援の波が来ることは確実です。
再生支援のパターンでは、借入金のリスケジュールによるキャッシュフローの改善に応じて報酬を受け取るのが主な収入源になります。
借入金額のカットに成功すれば、補助金を獲得するのと同じで中小企業にダイレクトにお金が残るため、その数パーセントを受け取ってもWin-Winの関係が構築できます。
この時の報酬は数十万円~数百万円となります。
年間10件を対応でき、平均100万円の報酬が得られれば1,000万円になります。再生支援については、経済の環境によって仕事の量が変わってくると思いますが、今後の一定期間は十分に仕事が発生すると考えられます。
M&Aアドバイザー中心の中小企業診断士
スモールM&Aという言葉が普及し始めたここ数年、急速に台頭してきたのがM&Aアドバイザーという仕事です。この業務に絡んでいる中小企業診断士も高収入が期待できますが、実感としてM&A市場はもはや過当競争時代に突入しているように見受けられます。
それだけおいしい市場だからともいえますが、素人同然の中小企業診断士でも重宝がられた黎明期はすでに過ぎて、大手M&A業者が比較的スモールなM&Aにも進出してきているのが現在のフェーズです。
M&Aはレーマン方式という報酬形態で報酬を得るのが一般的です。
100億円超の部分 | 1% |
50億円超~100億円以下の部分 | 2% |
10億円超~50億円以下の部分 | 3% |
5億円超~10億円以下の部分 | 4% |
5億円以下の部分 | 5% |
中小企業診断士の一事務所で100億円超のM&Aに対応するというのは現実的ではなりませんが、5億円以下で5%の辺りで、実際5億円の取引が発生したら2,500万円の報酬を得られることになります。
まさに一発ホームラン狙いのような話ですが、実績が積み上げられて情報が集まってくれば非常に高い伸びになることが期待できます。ただ、前述の通り現時点で一中小企業診断士事務所がM&Aメインで仕事をするには何らかの工夫が必要になります。
顧問業務中心の中小企業診断士
年収の金額というより、安定的な収入が見込めるものとして、会社と顧問契約を結び、月額制で報酬をもらうというものがあります。
中小企業診断士が顧問契約を結ぶというのは簡単ではありませんが、経営コンサルタントとして継続的な支援を希望する会社は無いわけではなく、潜在的なニーズは想像以上にあると考えられます。
実際、私が知っている中小企業診断士の方にも顧問契約を締結している人がいるので、そんなに珍しいケースではないようです。
顧問料に関しては協会として推奨する中小企業診断士報酬が月額10万円となっています。
「月額10万円ももらえるの!?」
と思うかもしれませんが、それだけの付加価値を提供する必要があります。簡単に依頼が来るものではありません。
付加価値の高いサービスと、実績、評判等々、また顧問料を払えるある程度の規模(年商数十億円規模以上)の会社との関係構築が必要になってきます。
年商が数十億円規模以上となってくると、経営に関するアドバイスも年商数千万円程度の小さな会社の社長さんに対するコンサルティングとは全く変わってきます。
このようにハードルは高いですが、一度顧問契約を締結できれば、安定的に収入が確保でき他の収入減よりもはるかに安定することになります。
多様な可能性
このほかにも中小企業診断士事務所として、どのようなコンサルティングを行うかについては様々な可能性があります。
相手が何をやってほしいかが重要
独立開業して3年目になりましたが、最近はM&Aについての話が巷で騒がれている印象です。しかしこれは、こちら側が儲かるからに他なりません。
M&Aは仕事としてもやりがいがあり、労力もかかりますが他の仕事に比べても労力のわりに何倍も儲かります。いい案件を1回成立させればしばらくは働かなくてもいいといったことも夢ではありません。
このような仕事は競争も激しく、なかなか案件になるケースがない片思いになりがちです。
実際に安定的に仕事をしていくためには、両想いになる必要があります。すなわち、こちらがやりたいという思いと、相手がやってほしいという思いが一致するポイントを探すということです。
相手である経営者がやってほしいと思っている課題は多岐にわたります。その中で、やっている人が少ないこと、自分が得意でやりたいことを見つけ出すことができれば唯一無二のコンサルタントとして引く手あまたになります。
とはいえ、誰もやっていないことというのは、そもそもやってほしいと思っている人がいないとか、割に合わないとか、何らかの理由でビジネスにならない可能性も高いです。
で、結局年収は?
結局年収はどれぐらいかというと、中小企業診断士が一人事務所で稼げるレベルでいくと、2千万円ぐらいが限界ではないかと予想します。普通にがんばれば700~800万円ぐらいの個人事業主としてやっていけるでしょう。
人を雇い、捌ける処理量を増やせばさらなる拡大は望めますし、逆に仕事を増やすべく営業活動を行わなければ0円。まったく仕事にならないということも十分あり得ます。
資格を取る価値はあるの?という疑問についての私の回答は「ある」ですが、これは人によります。私は今資格を取ってよかったと感じていますが、人によっては役に立たないと思う人もいるでしょう。
正直なところ、「資格で食べていきたい」と考えている人にはこの資格は向いていないです。資格で食べていくのであれば独占業務がある他の資格を目指すべきです。
中小企業診断士より行政書士の方が難易度も低いし、たくさんの独占業務があり安定して稼げるチャンスがあります。
中小企業診断士は資格で食べていく資格ではなく、経営コンサルタントとして中小企業をサポートすることを仕事にしたい人が、わかりやすいアイコンとして取得するイメージです。
中小企業診断士を取得することによって、中小企業を助ける様々な知識を体系的に学ぶことができます。
それがなくても、経営コンサルタントはできますし、中小企業診断士事務所としてうまくいく人は資格がなくてもうまくやれると思います。
しかしそれでも、中小企業診断士であるからこそ入ってくる情報やネットワークというのは生かせる人には非常に強力なツールになります。